8.酒のつまみ、再び

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 とりあえず、と言って、僕たちの目の前にはビールの小瓶と小さなグラス、枝豆が置かれる。  崇さんがグラスに注ごうとするのを、僕がやんわりと「やります」と言うと、崇さんは「そうか?」と言って、嬉しそうに小瓶を渡した。  周囲の騒めきとは相反して、僕たちの間に会話はなく、だけど、なんとなく、心地よい雰囲気に、自然と口元が綻ぶ。 「それじゃ、テルくん、お疲れ様」 「あ、はい、ありがとうございます」  カチン、とグラスのぶつかる音。僕は一気にビールを飲み干した。 「ぷはっ」  「おお、やるねぇ」  優しく笑いながら、崇さんもグラスに口をつけた。 「ちょっと、久しぶりだったんで」 「ん?何、禁酒してたの?」 「え、いや、そういう訳ではないんですが」  崇さんがもう一度、僕のグラスにビールを注ごうとした時、女将さんが、頼んでいた料理を持ってきた。
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