8.酒のつまみ、再び

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 何か言うべきなのかもしれないけど、上手く言葉にできない。  自分でもわかっているつもりなのだ。  きっと、結婚式の記念の物なのだろう。  きっと、捨てることなんて出来ない物なのだろう。   きっと、僕がいるから裏返してくれてたんだろう。  きっと、普段はそんなに意識しないで、普通に使っている物なのだろう。  だから、今も無意識に見てしまったのだろう……    頭では理解してても、やっぱり僕の中では少しばかり……いや、かなり、ショックな物だった。 「……ごめんよ」  崇さんは大人だから、僕に何も言わせずに、ただずっと頭を撫で続けてくれた。  そのおかげもあってなのか、崇さんの温もりのおかげなのか、再び瞼がゆっくりと落ちていき、次に目が覚めた時には、もう崇さんはベッドの中にはいなかった。
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