8.酒のつまみ、再び

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 鼻をかすめるアフターシェーブローションの匂いに、つい、頬を摺り寄せたくなる。   「……こんなのもらっちゃったら、僕、ずっとここに居ついてしまうかもれません」  ポソッと、つい本音が零れてしまう。本当は、ずっと一緒にいたい。でも、それは僕の我儘で……。 「構わない、って言ったら?」 「えっ!」  崇さんの言葉に、僕は腕の中なのに、思い切り顔を向けた。  目の前には、極上の微笑みとともに、崇さんの唇が僕のそれに重なった。  チュッと軽いリップ音とともに、唇が離れていく。  ほわんとした気持ちのまま、ジッと見つめ合う僕たち。 「すぐにとは言わない。でも、ちょっとだけ考えてくれるかな」 「……はい」  嬉しすぎて僕はいっぱいいっぱいで、崇さんのがっしりした肩に額を押し付けた。  そして、心の中で、いつここに引っ越して来ようか、密かに計画をたてはじめた僕なのであった。 <終>
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