1.酒のつまみ

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 チラリと尾賀さんも僕の顔を見たけれど、彼女は釣り銭のほうを優先していた。 「ちょうど頂戴いたします」  レシートを渡すと、おじさんは今日もズボンのポケットに突っ込むのかと思ったら、長財布の中にレシートを仕舞ってからレジから離れていった。  いつもと違う行動に、あれ?と思ったけれど、じっくりと観察する時間なんてないほど、列ができてしまっていたので、おじさんのことをちゃんと見ることができなかった。  閉店の音楽が鳴りだしたころにはお客さんの列も途切れたので、レジ閉めを他の人に任せて、僕は商品の補充と掃除を始める。  今日も一日、けっこう大変だったなぁ、と思いながら、ふと、あの酒のつまみを買っていくおじさんのことを思い出す。  あの人、ひどく疲れてるみたいだったなぁ。  顔色もあまりよくはなかったし。  他人事なんだけど、なぜかあの人のことが気になって仕方がなかった。
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