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チラリと尾賀さんも僕の顔を見たけれど、彼女は釣り銭のほうを優先していた。
「ちょうど頂戴いたします」
レシートを渡すと、おじさんは今日もズボンのポケットに突っ込むのかと思ったら、長財布の中にレシートを仕舞ってからレジから離れていった。
いつもと違う行動に、あれ?と思ったけれど、じっくりと観察する時間なんてないほど、列ができてしまっていたので、おじさんのことをちゃんと見ることができなかった。
閉店の音楽が鳴りだしたころにはお客さんの列も途切れたので、レジ閉めを他の人に任せて、僕は商品の補充と掃除を始める。
今日も一日、けっこう大変だったなぁ、と思いながら、ふと、あの酒のつまみを買っていくおじさんのことを思い出す。
あの人、ひどく疲れてるみたいだったなぁ。
顔色もあまりよくはなかったし。
他人事なんだけど、なぜかあの人のことが気になって仕方がなかった。
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