4.花火

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「もう、ほとんどないんですけどね」  こうやってつぶやいていったら、気持ちが減っていったらいいのに。 「じゃあ、私、買うわ」 「えー?いいんですか?」 「今度の週末、友達とバーベキュー行くから、その時にでも使うよ」 「毎度あり~」  僕の気持ちは、こんな風に簡単に引き受けてもらえるようなものじゃない。そもそも、言葉にしていいものでもない。  尾賀さんが店のカゴの中にいれた花火を、レジに持っていく姿を目の端に見ながら、ため息をつく。この想いはたぶん、ずっと胸の中に抱え込んだままなんだろう。 「お願いしまーす」 「あ、はーい」  尾賀さんより先に並んだお客さんの声に、僕は慌てて返事をする。そして、いつも通りにレジに立ち、お客さんの商品を受け取るのだった。
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