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「い、痛いですっ」
「わ、悪い。でも、マジで頼むよ、俺も困るんだ」
「勝手に困ればいいじゃないですか。そもそも、僕じゃなくたって、平川先輩のサークルの後輩とか、誰かいるでしょう!?」
ムッとしながら、僕は顔をそらした。平川先輩はけっこう大所帯のお遊びサークルに入ってたはずだ。
そうだよ。僕じゃなくたっていいじゃないか。
「この時期に急に頼める奴がいないから、お前に頼んでるんだよ」
"頼むよぉ~”と拝まれても、無理なものは無理だ。
「はぁ?僕だって無理ですからっ」
"堪忍袋の緒が切れる"というのは、こういうことを言うんだろう。いくらなんでも、ここまで僕のことを軽く見るとか、あんまりだと思った。ここが廊下で、僕たち以外にも人がいるのはわかってても、 もう我慢などできなかった。
「自業自得ですっ。他をあたってくださいっ」
僕は掴まれてた腕を振り払うと、猛ダッシュでその場から逃げ出した。背後では平川先輩が僕の名前を叫んでいたようだけれど、そんなことは関係なかった。
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