5.ネクタイ

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 先輩のあまりの言い草に頭にきて大学から出てきてしまったけれど、少し冷静になって考えてみると、先輩が辞めて困るのは先輩を直接見てる社員の人で、もしかしたら、その人の上にいるのは山本さんではないのか? と、思い至って、焦ってきた。  もし、山本さんが困るのだったなら。あんな自分勝手な先輩なだけに、困ったことになってしまうのではないか。  もし、僕が短い期間でもお手伝いにいったら、山本さん、少しでも楽になったりするんだろうか?  何も確実な情報があるわけではなく、すべて僕の妄想なだけかもしれない。  そう思っていても、心の中に芽生えてしまった不安は、なかなか消えてくれない。  悶々と考えながら歩いているうちに、100均の入っている駅ビルの前まで着いていた。僕は大きくため息をつきをついて、駅ビルの中に入っていった。
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