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正午にはまだ早いが、日差しに温かさを感じる十時過ぎ。
ホワイトチャペル地区の一角。
「……で、何でアタシに聞くの? やっぱりアタシが頼りになるって事?」
ヴェロニカが顔をにやつかせて言う。
「情報源は複数持っている。その中の一つに過ぎん」
「またまたー!」
「知らんならいい」
踵を返そうとする玉兎。
「待ちなって。心当たりはあるよ。寝物語に女を脅かそうって男は多いからね」
胸を張るヴェロニカ。彼女自身が客を取っているわけではないのだが。
「最近、フリート街で次々、行方不明者が出てるって。しかも、その後、みんな失血死体で見つかるんだってさ」
「ウエストミンスターの方か……こちらとの情報にも合致するな」
「なになに? また怪人の調査?」
「……いいか。これは本当に危険なのだ。絶対について来るな」
静かに、しかし威圧すらしているように言う。
「……なによ。だったらあたしに聞かなきゃいいじゃない」
へそを曲げるヴェロニカ。
「……信用しているからなんだがな」
背を向け、玉兎は歩き出す。
そんな呟きが聞こえたかはわからないが、ヴェロニカは考え込んでいた。
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