第二話「倫敦の吸血鬼 前編」

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「うわああああ!?」  絶叫し、ヴェロニカは駆けだした。  処刑人はそれを見て追いかけて来た。 (私を……狙ってるって事!?)  顔面を蒼白にしながら、ヴェロニカは走る。  よくよく見れば、処刑人はその手に銀の斧を握っていた。 (あいつが……失血死事件の犯人だ……! 玉兎に知らせないと……!)  王立裁判所の近くにはテンプル教会がある。 (とにかく教会へ!)  焦る気持ちはミスを生む。  記念碑のすぐそばにあるはずのテンプル教会が見つからない。  実は間違えて真逆にあるキングス・カレッジ・ロンドンに向かう道に入ってしまったのだが、彼女は気付かなかったのだ。  だが、それが功を奏した。  フリート街から離れた事で霧が薄れ始め、かつ大学の側という事で人通りが多くなったのだ。  気付けば、もう処刑人はついてきていなかった。 「ふぅ……」  一息ついた彼女の肩が、不意に叩かれた。 「きゃああああああああああっ!!」  凄まじい絶叫が響き渡る。  が―― 「……俺だ」  肩を叩いたのは、渋い顔をした玉兎であった。
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