1人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわああああ!?」
絶叫し、ヴェロニカは駆けだした。
処刑人はそれを見て追いかけて来た。
(私を……狙ってるって事!?)
顔面を蒼白にしながら、ヴェロニカは走る。
よくよく見れば、処刑人はその手に銀の斧を握っていた。
(あいつが……失血死事件の犯人だ……! 玉兎に知らせないと……!)
王立裁判所の近くにはテンプル教会がある。
(とにかく教会へ!)
焦る気持ちはミスを生む。
記念碑のすぐそばにあるはずのテンプル教会が見つからない。
実は間違えて真逆にあるキングス・カレッジ・ロンドンに向かう道に入ってしまったのだが、彼女は気付かなかったのだ。
だが、それが功を奏した。
フリート街から離れた事で霧が薄れ始め、かつ大学の側という事で人通りが多くなったのだ。
気付けば、もう処刑人はついてきていなかった。
「ふぅ……」
一息ついた彼女の肩が、不意に叩かれた。
「きゃああああああああああっ!!」
凄まじい絶叫が響き渡る。
が――
「……俺だ」
肩を叩いたのは、渋い顔をした玉兎であった。
最初のコメントを投稿しよう!