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確かに、そこには女の顔があった。
それも目鼻立ちがよく、端整で、歳は20代中頃から30歳といったところの。
ともすれば“者”は女だったが、美しいとまではいかなかった。何故なら左眼は潰れ、右眼は血のように赤ければ、獣のそれと同じ長円瞳孔の眼をしていたからだ。
「おっかねえ目ン玉してやがるぜ」
「女ァ、少しは反応したらどうだあ? ……って、こいつ、舌がねえよ!」
隻眼の女の口を無理やり開けて、山賊の1人が目を剥いた。
他の山賊達もこぞって女の口を覗きこむ。
舌が削ぎ取られたようにそっくり無くなっていた。
山賊達は言葉を忘れて互いに顔を見合わせる。
その一方で、修道士が何か感づいたように目を見張っていた。すると、あたかも女が戦士であるかのように突として叫ぶ。
「旅のお方、お助けください!」
それを機に、息を吹き返したように次々と、
「お願いします!」
「お願いします!」
と、修道女の口から懇願する声が上がった。
やにわにリーダーが剣を地面に叩きつける。
「テメエらあ! 性懲りもなく騒ぎやがったな! もう遊びは終わりだ! 男は身包み剥いで食いモンの餌にする! 女と積み荷は俺達のモンだ!!」
リーダーが高らかに宣言すると、各々手にした得物を天高く掲げた山賊達から鬨(とき)が上がった。
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