① 隻眼の女

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「お、お止めください!」 「お助けください!」 「それだけはお許しください!」  などと、悲鳴に混じって懇願の声が尽かず上がる。  しかし山賊はもう止まらない。奇声を発し、隻眼の女からキャラバンへ身体を翻す。  その時だ。  山賊の1人が唸った。  口の端からだらしなく血を垂らしたかと思えば、たちまち溢れさせて、地べたに突っ伏す。 「な、何だ!?」  仲間がふり返るなり動揺する。  一方、マントから覗く女の右手に、鈍色に光る尖った物が握られている。  短剣だ。ともすると今にも滴りそうな赤で塗れている。  女は戦士だった。 「テメエ、やりやがったな!?」  誰ともなく声を荒らげた山賊が、矛先をキャラバンから一転して隻眼の女へ向ける。そして殺意を剥き出し、鬨を上げながら一斉に剣を振りかざして斬りかかった。  しかしここからは一瞬だった。
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