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「お、お止めください!」
「お助けください!」
「それだけはお許しください!」
などと、悲鳴に混じって懇願の声が尽かず上がる。
しかし山賊はもう止まらない。奇声を発し、隻眼の女からキャラバンへ身体を翻す。
その時だ。
山賊の1人が唸った。
口の端からだらしなく血を垂らしたかと思えば、たちまち溢れさせて、地べたに突っ伏す。
「な、何だ!?」
仲間がふり返るなり動揺する。
一方、マントから覗く女の右手に、鈍色に光る尖った物が握られている。
短剣だ。ともすると今にも滴りそうな赤で塗れている。
女は戦士だった。
「テメエ、やりやがったな!?」
誰ともなく声を荒らげた山賊が、矛先をキャラバンから一転して隻眼の女へ向ける。そして殺意を剥き出し、鬨を上げながら一斉に剣を振りかざして斬りかかった。
しかしここからは一瞬だった。
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