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そして夜も更け町の明かりも消えた頃、しんと静まり返った教会で、先程の教会兵士達が隻眼の女がいる客室へ迫っていた。
1人がそっと扉を開け、1人が中を覗く。
静まる部屋に、膨らんだベッド。
兵士達は音もなくベッドへ近づくと、そこへ一斉に剣を突き立てる。しかし手応えに違和感を覚えてシーツを剥ぎ取ると、そこにあったのは台無しになった枕だった。
顔を見合わせる教会兵士達。
そこへ、空を切るような殺気が迫る。
程なくして隻眼の女が窓から身を乗り出した。僅かな出っ張りや目地の窪みを器用に伝い、教会の壁を蜘蛛のように移動する。
『さて、まずは装備を取り返さぬといかんな』
隻眼の女が壁を伝っている頃、見回りをしていた修道女が客室と隣接する廊下を歩いていた。
僅かに開いている扉が目に留まって、足が向く。
たちまち雷が落ちたような絶叫が教会に轟いた。
扉の前で腰を抜かした修道女の視線の先には、夥しい血で赤く染まった室内と、胴と脚を分かった教会兵士達の無残な屍があった。
『案外早かったな』
特に危機感を持った様子もなく“声”が言う。
一方、寝室で修道女の絶叫を耳にしたアドバスのもとに教会兵士が駆けつけた。
「アドバス様、女が兵を殺害し逃走しました!」
「おのれ、何という失態だ……。私は万一に備え地下壕へ行く。よいか、必ず食い止めよ!」
「御意!」
アドバスは数人の護衛を連れて教会地下の壕へ向かった。
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