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隻眼の女は辿り着いた教会兵士の詰所で己の得物を取り戻していた。
『よもや他人から取り上げた武具を手前の物にしているとはな。教会兵士の名が聞いて呆れる』
テーブルの上に開け放たれた木箱の中には、武器の山。短剣に長剣、ナックルダスターにジャマダハル、他にもいくつかあるが、全てこの女の得物だ。
女はそれらを全て取り戻すと、壁に掛かっていた教会兵士のマントを素知らぬ顔で取り上げ、羽織る。
『これから如何にする? ……と言っても、決まっておるか』
女は足元の死屍累々を跨ぐと、今度は窓からでなく扉から堂々と出た。
「いたぞ!」
早速、捜索していた教会兵士に見つかった。
しかし教会兵士達は鬼気迫る女を前に戦慄を禁じ得ない。それでも仲間を呼び寄せては刃を振るって来る彼らを、女は容赦なく斬り伏せていく。
やがて地下壕に身を寄せたアドバスの耳にも、兵士達の悲鳴が届いた。
「!!」
地下壕は1本の通路で地上と結ばれており、扉もその通路とを隔てる1つしかない。
アドバスは服の下に隠した物に上から触れて、女を待ち受ける。
通路では、立ち塞がる兵士達の返り血を浴びながら、今まさに隻眼の女が壕の扉へ近づいていた。そして残すところ数人となった兵士を1人、また1人と斬り伏せると、とうとう最後の兵士の首を宙へ跳ね上げ、扉の前に立つ。
しかし取っ手を引いてみるが、扉はびくともしない。
それもそのはず、壕側では幾重もの南京錠や閂が何人の侵入も阻んでいたのだ。加えて、扉は何枚もの板を重ねてなお鋲で補強されており、破城槌でもなければ容易に突破することは困難な代物だった。
が、女には関係なかった。
女は片足立ちをして扉に足をかけると、す~っと大きく息を吸いこんで、蹴る。
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