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見た目は無精髭のイケてない男。
二日酔いで出勤して来る凄腕の一級建築士。
酒と女と煙草が生き甲斐なんて私が最も嫌いなタイプの男のはずなのに。
こうしてふと見せる陸の優しさは、あの頃の彼そのもので私の心が大きく揺れる。
やがてエスカレーターから流れて行く人ごみに逆らって後ろの陸に振り返ると、彼はニヤリと笑って言った。
「ところで岸谷さん、酒は飲めるクチ?」
「……え? ……まぁ少しは」
「そう。東雲部長はザルだから潰されないように頑張って」
「……は?」
首を傾げた私に陸はまた楽しそうに笑みを見せると駅の改札に向かって歩き出した。
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