Act.2

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「陸っ!」 人ごみの中に響いた私の声で、陸の足が止まる。 私の腕を掴んでいた彼の手はスッと離れて拳を握りしめた。 そして雑踏の中、ゆっくりと振り返った陸の瞳が私を見つめる。 まるでそこだけが時を止めてしまったかのように、私の耳には陸の声だけが小さく聞こえた。 「なんだ……覚えてたんだ」 「…………」 「じゃあ話は早い。行くぞ美里」 ふっと小さく笑った陸が再び私の腕を引く。 「ねぇ陸、髭を剃るだけなら公園でもいいでしょう?」 「嫌だね」 「だってもしも誰かに見られたら……」 必死に食い下がろうとした私に冷たく陸の言葉が突き刺さる。
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