Act.3

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俯いて必死に堪える私に陸はどこか寂しそうに笑って言った。 「すまない。美里の部屋に勝手に上がり込んだあげく、ケチつけるようなこと言って」 「…………」 無言で首を横に振るけれど陸はもう一度私に「ごめん」と言って静かに玄関へと向かって行く。 その後ろ姿を見送りながら堪えていたものが腹の底から喉へと押しあがって来るような感覚を覚えた瞬間。 私は陸の背中に言葉を投げつけてしまった。 「何があったの?」 「え?」 「何が……陸を変えたの?」 この10年、あんなにも純粋だった彼がどうしてこんな風に変わってしまったのだろう。
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