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「朝からため息ですか?」
エレベーターの中から聞こえた声に慌てて背筋を伸ばす。
すると水野さんはチラリと私の手元を見て、エレベーターのドアが閉まらないよう手を掛けてくれた。
「堀川さんの朝食の調達ですか?」
「あっ、いえ……あの……」
まさか陸には私が弁当を手作りしたとも、私の分を買って来いと言われたとも言えずに口ごもってしまった。
「…………」
「…………」
沈黙しながら俯く私を水野さんはどこか冷めた瞳で見つめると、ため息を吐き出しながら私の腕を引いた。
ゆっくりと閉じたエレベーターのドアは、小さな空間の中に私と水野さんを閉じ込める。
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