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怒りと悔しさで掴んだ胸倉を離さない吉岡さんに、陸は淡々と言葉を放った。
「この会社に吉岡が就職して来てから今日まで、俺はお前を俺のレプリカだなんて思ったことは一度もないし、俺より劣っていると思ったこともないよ」
「…………」
「ただひとつだけ俺と吉岡に違いがあるとしたら、自分自身と正面から向き合っているかどうか。それだけだと俺は思う」
陸の言葉に吉岡さんの瞳が微かに揺れた。
その様子を私の隣で水野さんも唇を噛みながら見つめている。
「確かに吉岡が言うように、俺をここまで育ててくれたのは石原社長だ。その恩は一生忘れないし、いつか必ず恩返ししたいと考えてる」
「……だったら何故……」
吉岡さんがそう問いかけると、陸は力強い瞳で答えた。
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