Act.11

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その日、何とか必要書類を作成し終えた私は陸の指示通り一度帰宅して着替えのスーツをバッグに詰めてから再び家を出た。 定例会の会場は幸いにも、私の家からは二駅ほどの場所だった。 せっかく門前仲町のお店を吉岡さんに教えたのに、今回は採用にならなかったようだ。 駅の改札を出て、会場となる居酒屋へと足早に向かっていると、後方から誰かが私を呼んだ。 「岸谷さん!」 あまりの声の大きさに驚いて足を止めた私が振り返ると、そこに立っていたのは受付嬢の秋庭さんだった。 「あ、秋庭さん、こんばんは」 「もー、岸谷さん、歩くの早すぎー」 小走りで私に駆け寄った秋庭さんが、呆れたように笑う。
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