Act.12 Side R

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おそらくこのゲートから先は、顧客の完全なプライベート空間ということなのだろう。 対応もいいし、このセフティボックスは信用出来るなと思いながら俺は光の点滅を繰り返すボックスの前に足を進めた。 センサーにカードをかざすとロックの外れる音が静かな空間に鳴った。 引き出し式のボックスを開けると、ご丁寧に蓋までついている。 作り自体は銀行の貸金庫となんら変わらないようだ。 ゆっくりとその蓋を取り、箱の中央にポケットから取り出したものをそっと置く。 俺の原点であり、決して失いたくなかった宝物。 けれどこの小さな箱に封印することも、今の俺が俺であるために必要なことなのかもしれない。
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