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まだ明日面接に来る元ファッションデザイナーが美里と決まった訳じゃない。
けれど引っ越した美里を探してもうじき3年。
この巡り合せが彼女でなかったとしたら、来年の春、あの桜の木の下に行っても美里はいない気がした。
他の誰かと結婚して……俺たちの約束は終わっている気がした。
「なぁ吉岡」
「何ですか?」
「次に俺のアシスタントになる人は設計のこととか……」
「はい?」
「……いや、何でもない」
小さく笑って俺は席を立ち、会議室から出た。
もしも明日、ここに面接にやって来る人物が美里だったら。
そして彼女がまだ岸谷という姓のままだったら。
俺は必ず彼女にもう一度、恋をさせてみせる。
そう心に誓いながら───。
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