Act.13 Side R

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しかしそれから何日かすると、設計事務所での経験があった金山さんは、すぐに仕事を覚えたようで水野さんも吉岡も彼女を正社員にと考え始めたようだった。 もはや俺の策略も、ここまでかと思い始める。 しかし相変わらずな金山さんのアピールに疲れ果てた俺は、段々と身なりにも気を使わなくなって行った。 「堀川さん、せめて出勤前に髭くらい剃って来たらどうですか?」 「別に今日はクライアントと会う予定もないし」 「もうっ!堀川さん、髭剃ったらもっとカッコいいのに」 「…………」 どうして金山さんが怒るのかなんて分かりきっている。 この会社に根強く残る派遣差別。 水野さんを除く正社員の女子たちに見くだされ続ける金山さんが、唯一優位に思うのは堀川陸の専属アシスタントという立場だ。
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