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「実は今、美怜には言ってないんだが、倉元先生と飲んでるんだよ」
「えっ?」
倉元先生というのは、俺が半年くらい前に提出した、日本最大級のドーム設計コンペの審査委員長を務めている、国内でも重鎮の一級建築士だ。
倉元先生が直々に社長に会いに来たということは必然的にその意味を俺も理解出来た。
おそらく石原設計事務所の誰かの作品が、コンペで優勝したということだろう。
それがどうか俺ではありませんようにと願いながら、社長に尋ねる。
「結果が出たんですね?」
「ああ、ちょっと倉元先生に代わるから」
そう言って社長は電話を倉元先生へと手渡したようだ。
しばしの沈黙の後、威圧的とも思える倉元先生の声が聞こえた。
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