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「……ありがとう……ございます」
拳を握りながら必死に紡いだ言葉。
そんな俺の反応を、倉元先生はおそらく喜びから来るものだと思ったのだろう。
「声が震えるほど喜んでもらえて、わたしも嬉しいよ。
表彰式は再来週だ。その時にでも一緒に酒を飲もう」
そう言って満足そうに笑った倉元先生から電話を手渡された社長は困惑した声で言った。
「堀川、例の件はまたあとで話そう。明日の早朝にでもオフィスに行くよ」
「……はい、分かりました」
しぶしぶ社長との電話を切って、俺は真っ暗な空に大きくため息を吐き出した。
ようやく美里と俺の新たな夢に向かうスタートラインに立てたのに。
美里を大切に思う気持ち、家族を大切に思う気持ち、そして仲間を大切に思う気持ち。
全て天秤にかけることなど出来ない感情が俺を追い詰める。
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