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立ち上がったパソコン画面にやりかけの設計図を開き、俺は仕事を再開した。
今はとにかく、俺と美里の新たな夢に向かって突き進むしかない。
もう二度と彼女を失わないように、しっかりと彼女の手を握りしめてやりたいから。
立つ鳥、跡を濁さず。
その思いだけで、俺は一心不乱に設計図を引いた。
やがて時計の針が5時半を過ぎた頃だっただろうか。
ガコンという微かな音とともに、エレベーターが動き出す。
おそらく警備員が早朝の見回りに動き始めたのだろうと思いながら、パソコン画面に集中していると、設計部に向かって来る靴音が聞こえた。
警備員のものとは違う、その音の響きに驚いて振り返ると、そこには瞳を潤ませた美怜の姿があった。
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