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この会社の社員でもない彼女がこんな早朝にやって来た理由は、嫌でも理解する。
きっと社長から俺の退職について聞かされたのだろう。
思った通り、俺に歩み寄った美怜は大粒の涙を落としながら呟いた。
「なんで……陸がこの会社を辞める必要があるの?」
設計士になってから今日まで、美怜の激励や思いやりにはもちろん感謝している。
だけど俺にはどうしても諦められない、大切な夢がある。
「ごめん、美怜。だけどこの会社のこれからを担うのは俺じゃない」
「そんなことない!主人だって病気が分かった時に言ってたわ。
自分が倒れたら、この会社を任せられるのは堀川だって」
「俺はそんな器じゃないよ」
冷たく言い放っても、美怜は泣きながら訴える。
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