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美里をしきりに気にする俺の様子に気づいたのか、まだワインを追加しようとしていた勇慎さんを止め、美怜は美里に問いかけた。
「美里さん、大丈夫?」
「大丈夫です」
ヘラッと笑って答えた美里に深いため息が出る。
全然大丈夫そうには見えないんだけど、相変わらずこの女は負けず嫌いなんだなぁと思いながら俺は席を立った。
「さて、岸谷さん、今日はそろそろ帰って仕事の続きをしますか」
そう言いながら美里の腕を引いて立ち上がらせる。
酔いつぶれる前にこの場から美里を連れ出そうとした俺に、美怜が驚いたように問いかけた。
「え? まだ仕事残ってたの?」
「俺の仕事に終わりなんてないでしょーが。次々仕事取って来て石原設計事務所に押し付けるのはどなたですか?」
俺が吐き出した皮肉に、美怜はペロっと舌を出しておどけてみせる。
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