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「例えばそれが……社長の退陣や後継についてのことだったとしても、です」
放った言葉で社長の瞳が大きく揺れた。
まさか俺がそこまで読んでいるとは社長も考えていなかったのだろう。
「美怜から聞いたか」
「ええ」
社長が愛する美怜の身体に傷をつけたくないがために、移植を拒んだことは、必然的に社長が死を覚悟したということ。
そうなればいずれこの石原設計事務所の社長退陣も覚悟しなくてはならない。
それと時期が重なってしまった俺と美里の再会。
そして俺の封印していた夢への再出発。コンペの優勝。
全ての歯車がここへ来て噛みあってしまったことは、俺も本音を言えば動揺を隠せなかった。
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