Act.20 Side R

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けれどそれを彼女が自分の力で乗り越えることが出来たとしたら。 もう俺達の未来に恐れるものなど何もない。 窓辺に立って見おろした都会の街並みが、微かにぼやける。 ねぇ美里、君は今、何を思ってる? ガラスに映った自分の姿を見て失笑する。 あの日、美里を失った時の自分もこんな顔してたのかな……。 けれど俺は最後まで信じてる。 俺達が交わしたあの約束は、決して夢物語ではなかったと。 色とりどりの灯りが揺れる街の景色の向こうに、俺は咲き誇る千年桜を思い浮かべながら、静かに彼女を待ち続けた。 この10年、何一つ変わることのなかった思いを胸に。
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