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「諸君。君たちは選ばれた学生である」
まだ風の冷たい二月のある日、国立花形職養成学校の体育館に二十名の学生が並んでいた。ツヤツヤと光るワックスの効いたフローリングの床に、若く活力に満ちあふれたりりしい立ち姿が映り込んでいる。のりの利いた制服、真っ白なスニーカー、張りのある肌にキラキラと輝く瞳。
正面ステージに立つ口ひげの校長が、ウォッホンとわざとらしく咳払いをした。
「バンナム国の平和を守る花形職に就くため、これから最終実施試験に参加して貰う」
もう一度ゴホンと咳払いを挟む。
「この旅立ちの扉の向こうに、君たちの先輩が待っている。そこはもう学校ではない。生と死を掛けた戦場なのだ」
多少大げさではあるが、校長の話していることは紛れもない事実である。校長の隣にそびえる銀色の大きな板が旅立ちの扉である。ガンプ軍のバキュラのようなこの扉の向こうには、座学では決して学ぶことのできない本物の現場が広がっているのだ。
「この試験はどのような理由であれ、リタイヤすれば即終了だ。リタイヤした者は平和で安全な世界に戻ってくることができる」
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