6人が本棚に入れています
本棚に追加
学生の一人がこほんと咳き込むと、釣られたようにあちこちで咳がする。校長は自分のことは棚に上げて「静粛に」と言った。
「リタイヤせず、辛い試練に耐え、自分に打ち勝った者だけが、この最終実地試験の合格者となり、つまりは花形職に就くことができるのだ」
学生たちは一様にゴクリとつばを飲み込んだ。今まで積み重ねてきた成果がこの先で試されるのだ。
「先生たち」
校長がステージ袖に合図を送ると、体育教師の田巻と張がステージに現れ扉の横に立った。二人ともガタイの良い筋肉質の教師だが、この大きな扉の横に立つと、まるで子どものように見える。二人は向き合って頷き、扉に手をかけた。
ギギギギギ……。
金属を引き摺るような重い音を立て、旅立ちの扉がゆっくりと開いていく。
「うわああああ」「おお!!」「すげぇ!」
学生たちから感嘆の声が上がった。銀色の扉の向こうに、ぐるぐると渦を巻く七色の光が輝いている。溢れる光と巻き起こる風で、周囲にぐるりと張られている紅白幕がひらひらと揺れた。
校長は学生たちに向き直って、再び咳払いをする。
「諸君! 繰り返す。君たちは選ばれた学生である。この光の先にある輝かしい未来に向かい、突き進んできたまえ!」
「「「はいっ!!!」」」
学生たちはステージに向かって駆け出し、次々と光の渦の中へ飛び込んで行った。
大きな夢と希望、ちょっぴりの不安を胸いっぱいに詰め込んで。
最初のコメントを投稿しよう!