プロローグ

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 学生の一人がこほんと咳き込むと、釣られたようにあちこちで咳がする。校長は自分のことは棚に上げて「静粛に」と言った。 「リタイヤせず、辛い試練に耐え、自分に打ち勝った者だけが、この最終実地試験の合格者となり、つまりは花形職に就くことができるのだ」  学生たちは一様にゴクリとつばを飲み込んだ。今まで積み重ねてきた成果がこの先で試されるのだ。 「先生たち」  校長がステージ袖に合図を送ると、体育教師の田巻と張がステージに現れ扉の横に立った。二人ともガタイの良い筋肉質の教師だが、この大きな扉の横に立つと、まるで子どものように見える。二人は向き合って頷き、扉に手をかけた。  ギギギギギ……。  金属を引き摺るような重い音を立て、旅立ちの扉がゆっくりと開いていく。 「うわああああ」「おお!!」「すげぇ!」  学生たちから感嘆の声が上がった。銀色の扉の向こうに、ぐるぐると渦を巻く七色の光が輝いている。溢れる光と巻き起こる風で、周囲にぐるりと張られている紅白幕がひらひらと揺れた。  校長は学生たちに向き直って、再び咳払いをする。 「諸君! 繰り返す。君たちは選ばれた学生である。この光の先にある輝かしい未来に向かい、突き進んできたまえ!」 「「「はいっ!!!」」」  学生たちはステージに向かって駆け出し、次々と光の渦の中へ飛び込んで行った。  大きな夢と希望、ちょっぴりの不安を胸いっぱいに詰め込んで。
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