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学生全員が扉の先に消えたところで、旅立ちの扉は閉められた。紅白幕を揺らしていた風が止み、教師達がざわざわと片付けを始める。
扉の前で張が田巻に耳打ちをした。
「今年は例の《・・》花形希望者ハ出たんデスか?」
田巻は大きな身体を丸めて小さな声で返す。
「いや、今年も居なかったんですよ。今回は主席の穴掘がターゲットらしいです」
「穴掘デスか。真面目な奴デスからネ、リタイヤは無いかもしれませんネ。確か希望は……」
張は唇に指をやって考える。田巻が横から答えた。
「ゼビウスですよ。ゼビウスからってのも、なかなか酷な話ですが」
校長の後に続き、二人の教師もステージ横の階段を降りる。
「とはいえ今のディグダグも長いですからね……そろそろ新人が入らないと」
「そうデスね。私、ディグダグの新人は見たことがアリませんよ」
田巻が苦笑する。
「私だってありませんよ。今のディグダグは十年選手ですから」
「そりゃあスゴイ。よほど向いてたんでしょうネ、その人は」
驚いた表情をする張に、田巻はより一層声を落とした。
「いや、それが……今のディグダグも穴掘と同じで……」
「田巻先生と張先生ーっ! こっちの幕を下ろすの手伝って貰えませんかあ」
体育館の入り口から声が掛かる。二人はそこで話を止めて入り口へと向かっていった。
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