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「境って…たまに遠くを見て、なんか悲しそうにしてるよね?それと関係ある?」
「え…」
俺は自分が無意識にそんな顔してた事と、森屋がそれに気がついてた事に驚いた。
何て答えて良いのか分からないし、ホントの事も言えないから黙っていると、森屋の方が先に話し出す。
「全部…なくなればいいのに。境の悲しい気持ち」
「………。うん…」
授業が始まるチャイムが鳴っても俺達は教室にいて、重いグレーの、ゆっくりと流れる雲を眺めていた。
森屋は俺に背を向け机の上に腰掛けていた。
広い背中…
少し茶色い髪…
たまに見える横顔…
「……森屋クンも寂しそうだよ?」
森屋が俺を振り返る。
それから、優しく笑った。
「それは、境が俺のモノにならないからだよ」
「えっ…」
俺は自分の顔が赤くなっていくのが分かる。
何でそんな事、平気でサラッと言うんだよ。
俺は自分の唇を押さえ耳まで熱くなっていくのを見られたくなくて下を向いた。
「ははっ冗談だよ。
…ね、境、屋上に行ってみない?」
森屋は机から降りて俺に近付き、顔を覗き込む。
「ね?行こう?」
「う、うん…。でも鍵閉まってたよね?」
「大丈夫。」
俺達は教室を出ると階段を上り屋上へ向かった。
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