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屋上への扉は南京錠がかかっている。
生徒の事故を防ぐ為だろう。
まぁ、前から鍵が付いていたのは俺も知ってたんだけど…
「帰ろっか」
俺がそう言うと、森屋は口の端を少し上げた。
「こないだね、柿本がさ、見つけたんだ。
この南京錠壊れてて、強く引っ張ったら開くんだってさ」
柿本、そんな事ばっかしてんだな。
でもこの時ばかりは、柿本ナイスと思った。
俺も屋上にいつか出てみたいな、なんて思ってたからだ。
森屋は南京錠を力いっぱい引っ張る。
ドアが揺れ、鍵がガチンと音を立てた。
「ほら、開いた」
森屋は南京錠を外して、屋上の扉をあけると
少しだけ強い風が俺と森屋を包み、それから吹き抜けて行く。
俺達は屋上に出て、そっと扉を閉める。
南京錠はバレないように引っ掛けておいて。
雲は相変わらず重いけど、すごく気持ちいい。
「気持ちいいね、屋上」
俺は屋上の端まで行くと景色を見渡した。
森屋は俺の後ろからゆっくりと歩いて来て、横にやって来る。
「駅が見えるよ。
それから、沙羅達といつも行ってるたこ焼き屋さんは、どの辺かな…」
強い風を受け、俺は髪を押さえながらたこ焼き屋を探した。
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