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「あの高い木が邪魔して見えないなぁ…。ね?たこ焼き屋さん、あの辺だよね?」
森屋を見上げると、森屋は俺をジッと見つめてて、喜んでたこ焼き屋なんか探してた自分が何か恥ずかしくなった。
俺は森屋から目線を外し、再び景色を見る。
「わ、私だけテンション高くって恥ずかしいじゃん…」
「俺も楽しいよ」
「私ばっか見ないでよ」
「うん」
そう言いながらも、視界の端で見える森屋は俺をずっと見つめていた。
俺は森屋の頬を片手で触ると、グイと押し、景色の方へ顔を向けさせた。
「ね、綺麗でしょ?」
「うん」
「あ、あそこ…ずっと遠くの、あの、木に囲まれた白い建物なんだろね?」
「本当だ。場所から言って駅からも遠いし、見た事もないね。
…今度、一緒に見に行ってみようか?」
「……。森屋クンて、誘うのうまいね」
「境と一緒にいたいだけだよ」
その時、大粒の雨が俺の腕に一粒落ちてきた。
そして、また一粒。
「雨」
俺達は景色を見るのをやめ、出入り口の屋根のある所に移動し雨宿りした。
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