恋愛中 "俺が女になったら可愛くなった"

買い物その1

あぁ、男の時なんて、痴漢なんてそんな心配なかったのに。

俺は深くため息を付いた。

もともと男にしては背も低い方で、顔も中性的、言うほど毛深くもなく、女子達には

「境は、女の子みたいでかわいいね」

なんて言われていた。

それだけでもちょっと気にしてたのに、喉仏も喉から膨らみを消し、すね毛や、ワキだってどんどん薄くなって、オンナ化が進んでいくうちに、女子のからかいに本気に怒るようになっていったんだった。

でも、今では、あの時俺をからかっていた女子共より、俺の方が可愛いぜ、と思えるようになったが。

更に言うと、この俺の前に座っているOLよりもな。

ん？

ふと、そのOLが読んでいる雑誌が目に入った。

「簡単にできる色々なお菓子の作り方」

こっそり上から覗くと、クッキーやシフォンケーキなどの文字と、作っている過程の写真が見えた。

"奏ちゃんが、早く来れる時には一緒に作って貰うからね～"

美優さんの言葉が頭の中に流れた。

俺もお菓子作りを手伝わないといけない時が来るみたいだし、家でちょっくら作ってみっかな。

この本、俺も買おう。