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今日は仕事中にわからないところを聞いても、しょうがねえなと悪態をつきつつも意地悪せずに教えてくれる。
でも、教えてもらっている間に今度はわたしの居心地が悪くなる。
わたしを見る広斗の目が優しい気がして、恥ずかしくて目を合わせることができない。
広斗の眼差しに耐えられなくて、慌てて目線を逸らして俯いたわたしの頬に、広斗の指の背が触れる。
撫でるようにして優しく動かされて、更に心臓の音が大きくなっていく。
「どうした? 体調悪い?」
「わっ悪くない!」
不覚にも上擦った声が出た。
「……変なやつ。でも目の下のクマすごいな」
「そう、かな?」
「昨日、二時間も寝てないからか。無理させたな。悪い」
広斗の親指が目元を辿る。
その言葉も、その指も一体なにを考えているの。
やめてよと声にならない心の叫びをあげながら、一人で視線を彷徨わせて慌ててしまう。
「だ、大丈夫です!」
広斗の手から逃げるようにして顔を逸らせたけれど、思わず敬語になってしまった自分が更に恥ずかしい。
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