2800人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
わたしは先程までの睨み合いをすっかり忘れて、広斗の顔を覗き込んだ。
「そうだね。これを機会に広斗って呼ぼうかな」
「……勝手にしろ」
ぶっきらぼうにそれだけ言ってまたパソコンに視線を戻してしまうから、袖を引っ張っる。
「なんだよ」
「広斗は?」
「俺?」
「わたしのことなんて呼ぶの? ゆり?」
「まぁ、そうだな。気が向いたら」
「え? いつ気が向くの?」
「知らない」
「なにそれ!」
なんで今呼んでくれないのと広斗を責めていると、またみんなが話し出す声が聞こえてきた。
「本当に君たちは……なんかもう、俺が恥ずかしい」
「いや、いいんじゃないですか?」
「なんか、青春を思い出す!」
「甘酸っぱい感じが前面に出てますよ」
まったくもう。
みんな好き勝手に話すんだから。
「この二人はもう、ほっといてあげてください」
最後に幸ちゃんが、その可愛い笑顔とともに手を叩いて締めくくる。
隣の広斗に再び視線を戻すと、広斗はなんだよとでも言いたげに、わたしの頭を小突く。
わたしは広斗に小突かれた頭を擦りながら、パソコンの画面に意識を戻した。
最初のコメントを投稿しよう!