【番外編】恋人の秘密《後編》

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「──馬鹿だよな。俺さ、今日イベントでファンの人たちと会ったんだけどなんていうか、改めて思ったんだよね。ああ、俺ってこんな人数の人たちに知られてるんだって。諒陽みたいに動画しか知らない人もいれたら一体何人俺をAV俳優だって認識してるんだろうって思ったら改めて、怖くなった」 「何を怖いと思うんだ? 新しい仕事に就いた時に誰かに言われるって?──違うよな?」  諒陽には真凰が何に怖がっているか大抵の想像はついていた──。真凰は俯いて黙ったままだ。 「お前は、俺の恋人がAV俳優だったっていう事実が怖いんだろう?」  ビクリと真凰が身体を反応させる。 「あのな、俺はそれでもお前が良いって思ったから告白したんだ。一緒に住もうって指輪も贈ったんだよ。俺の恋人はAV俳優だった男だ。でもそれがお前の選んだ道で、俺が選んだ相手なんだ。それでも不満があるなら──」 「いやだ!言わないで!!」  真凰は真っ青な顔をして諒陽を見上げた。怒っているのかと思った恋人は予想を覆すかのように優しい笑みを浮かべていた。 「馬鹿。出て行けなんて口が裂けても言うわけないだろ。俺がお前にいてくれって頼んだんだから」  身体中に広がった緊張が切れた糸のようにするするとほどけて真凰は力を失ったのか諒陽の胸に身体を預けた。 「怖かった……、俺、諒陽、諒陽……」     
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