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初恋の再会
太陽が南に高く上る午後──。
校舎から響き流れる生徒たちの笑い声。
グラウンドの砂埃は風に巻かれ、くるくると地面を走る。
すっかり緑色に表情を変えた桜の葉が、風が吹くたび眠る顔にかかるその影の形を変える。
強い日差しが瞼に当たり、俺は眉間に皺を寄せた。近付く足音とともに体が影に覆われ、薄っすら目を開けると、影の主がこちらを覗き込んでいた。
「いつまで寝てるんだ? そろそろ起きない?」
そういって俺の横に彼は腰掛け、微笑む。そのくったくのない笑顔が眩しくて、むず痒くて、その顔を真っ直ぐ見返すことができなかった。
「真凰(まお)は本当好きだな、この桜の木が」
彼は幹に凭れ、大きな桜の木を見上げていた。俺は、盗み見るようにその綺麗な横顔をひっそりと眺めた。
「……うん、好き」
呟く程度に告げた俺の声は、葉の音に混じり風に流れた。
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