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【番外編】恋人の秘密《後編》
別にAV俳優になりたかったわけじゃない──。
親友に馳せた恋心にいい加減踏ん切りをつけたくてハッテン場と呼ばれるところをビクビクしながら歩いていたらスカウトされたのだ。
自分が色んな男に汚されてしまえばもう親友に恋したところで無駄なんだと諦めがつくかと思った。俺みたいな男が諒陽を好きになっちゃいけないんだと。
だけど結局後悔する羽目になるのだ──。
愛される日が来ると知っていたならずっと綺麗なままで生きていたかったと。純文学にでも出てくる御家柄の良いお嬢様みたいに、純潔を守るお姫様みたいに──。
「──ごめん」
なぜか口を衝いた。諒陽は突然の謝罪に目を丸くした。
「……なんの話だ?」
「わかんない。なんか……色々思うところがあって」
馬鹿なことを言ったと真凰は後悔した。お互い裸になって抱き合った途端こんなシラけたことをなぜ言ってしまったのだろうと──。
案の定気が逸れたのか諒陽は真凰から身体を離した。呆れるようなその表情に真凰は思わず目を伏せるとその頭の上でため息が聞こえた。
「お前、また振り出しに戻るつもりか?」
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