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「お、お、オレの羽に触るなーっ!どうせっ、どうせオレはペンギンだ!鳥のくせに飛べないんだ!」
「拗ねるなよ。空は、って言ったろ。ペンギンは空は飛べないけど、水の中を飛ぶように泳ぐんだぞ。速くてかっこいいぞ?」
え、とチビ魔が羽をパタパタさせた。
「あんたは、何か得意なことはあるか?」
「お、おう!オレはシオンを起こすのがうまいぞ!あと歌える!ニンゲンの歌を歌える魔はオレだけだ、きっと!」
「へえ?すごいな。得意なことがふたつもあるんなら、ペンギンより凄いぞ」
チビ魔が、「え、そうか?」と目を輝かせる。
小さな小さな顔の、そのまた小さな目が輝いたら、不思議と大きく見えた。
子供の瞳だ。
すぐに涙がこぼれて、それ以上にたくさん笑顔もこぼれる、子供の瞳。
魔・・・のはずなのに。
皇輝は目を和ませながら、そっとチビ魔から視線をはずした。
悪いモノじゃない。
もし間近で目を合わせて、この小さなモノを眠らせてしまったら?
そうしたら。
俺の方こそ、魔性のモノだ。
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