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「やははははっ、なんだこれ、楽しいぞ?」
チビ魔を人差し指につかまらせて高い高いをしたら、気に入ったらしい。
「おい、おまえ!もっとだ。もっと高ーく!」
「しっかりつかまってろよ」
皇輝は顔より上まで腕をあげてやった。
「うはあ!いいな、いいな!高いぞ!」
「いやだけど、あんた、飛べるんじゃないのか? それ、その背中のって羽だろ?」
「・・・・・・・・」
チビ魔がものすごく分かりやすく、うなだれた。
漆黒で艶々の羽が力無く、垂れ下がる。
もしかして。
「悪い。・・・あー、あれだ。あんた、ペンギンの仲間なんだな」
「? ペンギンってなんだ?」
「鳥。鳥だけど空は飛べないやつ」
「!!! お、おまえ、ひどいやつだな!」
がぶっ。
「いてっ。こら、噛むんじゃない」
「やっぱりニンゲンはダメだ!キライだ!」
ぷいっと力いっぱい横を向くチビ魔は愛嬌たっぷりで、皇輝はくっと笑ってしまった。
ちょいちょいと羽に触れると、見た目どおりの艶やかな手触りで気持ちがいい。
おかしな生き物に触ることを、なぜ自分は全くためらわないのか。
不思議ではあったが、それも全部あの弱々しい男のせいだと思うことにした。
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