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プロローグ
食堂が忙しくなる時間帯である昼時、アルバイトのベリル・アルフォードも目まぐるしく働いていた。
注文をメモし、できあがった料理をテーブルへ運び……。
「──おさわりは禁止ですよー。ここは健全なお店ですからねー」
勘違いした客をいなし……。
バンッと大きな音がして驚いて顔を向けると、店のドアのガラス部分にヒビが入り、男がもたれかかっていた。
外から「ケンカか!?」という声が聞こえてくる。
当然、店内の大勢の客もドアのほうに注目し、会話も食事の手も止まってしまっている。
ドアに叩きつけられたらしい男は立ち上がり、何か叫びながら駆けていく。
争っているような音が聞こえてきた。
ベリルは顔をしかめた。
店の前でとても迷惑なことである。
「どうした。今の音はなんだ?」
奥の厨房から、食堂の主人兼シェフの中年男性が顔を出した。
「ケンカみたいです……」
ベリルが答えると、主人も顔をしかめる。
それから厨房に引っ込んだかと思うと、一抱えもある壺を持ってきてベリルに手渡した。
塩の壺だ。
「追い払ってこい」
「ええっ!? そんな無茶ですよ! 自警団を呼びましょうよ!」
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