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もはや止めに入ったのか参加しに来たのかわからなくなっていた。
すっかり頭に血が上ったベリルは、手前にいた男に重い塩壺を投げつけて昏倒させると、それを見てギョッとしたもう一方を指さし、
「吹き飛べ!」
と、声を張り上げる。
すると、男は空気の塊を腹にくらい、通りの向こうまでふっ飛ばされて転がった。
呆然と見ていたやじ馬達は、直後、勝者ベリルに喝采を送る。
「お嬢さん、魔法を使えたのか。あの男もまさかだったろうなぁ!」
「見かけによらず強いねぇ。用心棒になったほうが稼げるんじゃない?」
そんな声も混じり、ベリルはハッと我に返った。
ケンカは収まったが、店の前は大量の塩がぶちまけられ、割れた塩壺の下で男が一人倒れているという惨事だ。少し離れたところには、もう一人も気絶している。
「……おい」
背後からかけられた店の主人の声に、ベリルはビクッと肩を震わせた。
その声は、低く、怒りをはらんでいる。
恐ろしくて振り向くことができなかった。
「誰が塩全部ぶちまけろと言ったー!」
案の定落ちた雷に、ヒイッと身を縮まらせるベリル。
「おまけに店の前で死人を出すとは何事だ!」
「まだ死んでません!」
「ピクリともしねぇだろうが! どうすんだコレ!」
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