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「せ、正当防衛です! この人達、私にも暴力振るおうとしたんですよ!」
「何ぃ? どっか殴られたのか!?」
「いえ、どこも……」
「じゃあ、おまえの一方的な暴力じゃねぇか!」
「何でそうなるんですか!」
振り向いたベリルが必死に弁解する後ろのやじ馬達が、急にどよめいた。
意識が戻ったのか、とベリルが顔を向けると、そこには倒れた男の様子を見る見知らぬ男がいた。
自警団の者ではなさそうだ。
ベリルはそっとその男を観察する。
すると、その腕に、魔物退治専門のスイーパー協会の腕章を見つけた。
彼らは街道や時に町中に現れる魔物の退治を仕事にしている者達だ。
特殊な技術や技能を駆使して戦う、軍隊とは別の戦闘のプロである。
しかし、評判は良くない。
規律はあるが軍隊ほど厳しくはなく、仕事がなければ昼間から酔っ払って管を巻いている輩も多いからだ。
中には脅して金品を巻き上げる者もいる……という噂もある。
ベリルも店の主人も言い合いをやめ、じりじりと男から距離を取り始めた。
できれば関わりたくない。
「へぇ、一撃だな。たいしたもんだ、この壺、重かったろうに」
じりじりと後ずさりし、店の主人とそろって店内へ逃げ込もうとしたその時、顔をあげた男と目が合ってしまった。
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