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「……もしかして、おまえがやったの?」
「ち、違いますっ」
「嘘はいけないなぁ。俺、全部見てたし」
ベリルは、あんぐりと口をあけて男を凝視した。
二十代半ばくらいだろうか。悪戯が成功したような笑みを浮かべるその顔が、とても憎らしかった。
「み、店の前で暴れてて迷惑だったんですっ」
「なるほど。そりゃ確かに迷惑だな。昼時だし。それで、手っ取り早く物理的に沈黙させたんだな」
「そ、それは……結果的にそうなっただけで……」
「まあとりあえず、話を聞かせてくれないか?」
「ええっ!?」
魔物専門の組織にそんな権限があるのかと疑うベリル。
その疑問ははっきり顔に出ていた。
男は意地悪そうに笑って言った。
「自警団がその場にいなかった場合、スイーパー協会の者が代わりをすることができるんだよ。さ、行こうか」
「て、店長~」
「塩と壺の代金は請求しねぇ。どこへでも行きな」
解雇宣言された。
ベリルの目の前で、ヒビ割れたドアが無情に閉められる。
「うぅ……っ、200回目……」
ベリルはくずおれた。
地面に両手をつき、この世の終わりのように嘆くベリルの背に、スイーパーの男の遠慮がちな声がかけられる。
「あの、本当にただ話を聞くだけだから……」
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