プロローグ

5/7
前へ
/68ページ
次へ
「……もしかして、おまえがやったの?」 「ち、違いますっ」 「嘘はいけないなぁ。俺、全部見てたし」  ベリルは、あんぐりと口をあけて男を凝視した。  二十代半ばくらいだろうか。悪戯が成功したような笑みを浮かべるその顔が、とても憎らしかった。 「み、店の前で暴れてて迷惑だったんですっ」 「なるほど。そりゃ確かに迷惑だな。昼時だし。それで、手っ取り早く物理的に沈黙させたんだな」 「そ、それは……結果的にそうなっただけで……」 「まあとりあえず、話を聞かせてくれないか?」 「ええっ!?」  魔物専門の組織にそんな権限があるのかと疑うベリル。  その疑問ははっきり顔に出ていた。  男は意地悪そうに笑って言った。 「自警団がその場にいなかった場合、スイーパー協会の者が代わりをすることができるんだよ。さ、行こうか」 「て、店長~」 「塩と壺の代金は請求しねぇ。どこへでも行きな」  解雇宣言された。  ベリルの目の前で、ヒビ割れたドアが無情に閉められる。 「うぅ……っ、200回目……」  ベリルはくずおれた。  地面に両手をつき、この世の終わりのように嘆くベリルの背に、スイーパーの男の遠慮がちな声がかけられる。 「あの、本当にただ話を聞くだけだから……」     
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加