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深い眠りから覚めていく。まだぼーっとした頭が目覚めていく自分の状況を理解していない。しかし頭とは別に体は眠りの世界からすでに目覚めているのか、下になっている体の一部に痛みがある。
「・・・痛い・・・」
体に感じる痛みが徐々に意識を覚醒させていく。思考がはっきりと定まらない頭は少しずつクリアになっていき、重い瞼に閉ざされた瞳は少しずつ開いていって視界を確保しつつある。
そこで目に飛び込んでくるのは自らが目覚めた場所の光景。しかしその光景に一切の見覚えがなく、また現実的な感覚さえない違和感から意識は一気に覚醒する。
「ここ・・・どこ?」
目に映る光景はとてもこの世のものとは思えない。薄暗く曇った空、そして草木が一本も生えていない岩肌剥き出しの荒野。そしてそれが見える光景の全て。どこまで続いているのかさえ分からない異様な場所での目覚めに、覚醒したとたん頭は現状把握に全力を注ぐ。しかしその結果は当然芳しくない。目が覚めたら見たことも聞いたこともなく、どこかも全く見当がつかない見知らぬ場所にいた。それが全てだった。
「・・・えっと・・・」
そこでふと自分の体に視線を落とす。意識が覚醒すると同時に今いる場所がどこかわからずそのことだけを考えていた。しかしよく考えれば、頭の中には自分の情報すら存在していなかったのだ。
「・・・誰?」
自分がどこのだれで何者なのかが全く分からない。目に映る手で顔や髪に触れ、そのまま下がっていく手はわずかな胸のふくらみに到達。そしてそのまま下を目指していき、初めて自分の性別が女性であることを知った。
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