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「・・・なに・・・これ・・・」
彼女の目に映ったもの。それはとてもこの世の光景ではなかった。衣服を剥ぎ取られた老若男女様々な人間が多数、鎖につながれて逃げることが叶わない。まるで家畜のように区切られた小さな吹きさらしの枠内に一人ずつ鎖で繋がれている。絶望感に支配された表情が嘘偽りない真実だということをヒシヒシと伝えて来る。
そしてその周囲には、家畜と呼ぶにふさわしい扱いを受けている人達を家畜たらしめている支配者の姿もあった。人間をはるかに超えるまがまがしい黒一色の巨躯。モノクロのように体の一部や目の当たりが白く見える以外は黒に覆われた巨人。二足歩行で二本の手を使うという人間に近い動きを見せる支配者達。彼らの手には原始的な武器である無骨な鉈や荒々しい棍棒が握られている。銃器の類や鋭利な刃物は持ち合わせていないのは一目で理解できるが、その巨躯と異様な肉体が合わされば銃器を持った狂人よりもはるかに身の危険を感じさせる。
「ひぃ・・・」
本能的に危険を察知したのか、彼女は隆起した荒野に転がる大きめの岩に身を隠す。見つかれば鎖につながれている彼らと同じような目に遭わされると直感が告げたことによる素早い動き。それにより見つかることはなかったが、安堵以上の恐怖心からその場を動くことができなかった。
「な・・・なに? なんなの?」
自問するように小声で独り言を呟く。しかし答えなど返って来るはずがない。それでもこの異様な光景に何かしらの理由をつけようと、彼女は頭をフル回転させて思い当たる理由を片っ端から並べていく。
地球が宇宙人に支配された、自分を含む一定数の人間が異星に拉致された、そもそもこれは現実ではない・・・等々、様々な理由を考え出す。考え出したのだが、その解答どころか解答に近づくための手掛かりすらない。
「ど・・・どうすれば・・・」
恐怖心に支配されて動けなくなっていると、突如人間が鎖につながれている家畜小屋から大きな声が聞こえてきた。その声に一度思考を止めた彼女は岩陰から少しだけ顔をのぞかせ、繰り広げられている異様な世界に視線を向ける。
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