1人が本棚に入れています
本棚に追加
「な・・・何なの・・・ここは・・・」
目の前で繰り広げられた光景に目を背けたくても体が恐怖で固まってしまって背けられなかった彼女。恐ろしい光景を見て震える体と同じく、思考も恐ろしさで正しく働いてくれない。
「それにあれは・・・」
若い男性の凄惨な姿。見たくなくても目を背けることができなくなっている彼女だったが、その解答は突如聞こえてきた声によってもたらされた。
「あれは血抜きだ」
「えっ・・・」
突如聞こえてきた男性の声に驚きの声を漏らしそうになった彼女だったが、その口を男性が素早く手で塞いで最悪の事態を回避する。
「静かに、あいつらに気付かれるぞ」
男性の声が告げる最悪の事態を想像した彼女はゾクッと背筋が凍りつく。口を塞がれた状態のまま、男性の声を理解したという意思を見せるように首をコクリと一度頷かせた。
「よし、いい子だ」
口を塞いでいた男性の手が離れる。そこで彼女は自分の口を塞いだ男性に視線を向ける。そこにいた男性は三十代くらいで、少し無精髭を生やしている整った顔立ちが印象的だった。優しそうな雰囲気を醸し出す彼は、彼女に比べて男性特有の少し大きめで頼りがいのある体で、彼女をやや包み込むように彼女の背に手を回していた。
最初のコメントを投稿しよう!